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ヘルニアクライシス 3 「小市民の入院」

2005/08/01 Mon
「重症ですね」
年の割に滑らかな肌と、きっちり七三に分けた髪形が印象的な医師が、MRIの画像を見ながら言った。
どうでも良いがこの先生、ちょっと良い男であった。往年の大川橋蔵を忍ばせるその顔には、目バリやマゲズラが良く似合いそうである。
後日カオさんがこの先生の説明を聞きながら、頭の中ではつい似顔絵の練習をしてしまったというのも頷けるのだが、これは本当にどうでもいい話だ。

医 「このまま入院しますか?」
ズ 「入院、した方が良いですか?」
医 「椎間板ヘルニアは、殆どの場合は手術せずに保存的療法でなんとかなるのです。でもズウミさんの場合はこれだけの重症ですから、手術せずに時間をかけて治すというのは現実的ではない気がします。」
ズ 「手術しないとだめですか…」
医 「必ずしもそうではありません。何日か薬を飲んで安静にしていただいて、それが効果的な様なら手術の必要はありません。とりあえず手術が必要かどうかを見極める為に1週間入院して様子を見ましょう。」
ズ 「様子を見る為の入院なら、薬だけ頂いて自宅で療養するってのじゃ駄目ですか?」
医 「それでもかまいません。ただ現在の痛みをかかえて自宅で療養するのはキツい面もあると思いますが……まあそうおっしゃるなら……お薬出しますから自宅で療養なさいますか?」
ズ 「はい、そうします。」
医 「では一週間後にまたいらして下さい。」

本心を言うと先生から入院を勧められた時には、一も二もなく従ってしまいたかった。トイレに行くのも不自由する人間が、介護する者もいない昼の時間を一人で過ごすには無理がある事は実感として良く分かっていた。
『でも入院すると金がかかるじゃないか(笑』
小市民は自分の身体を心配する前に、財布の中味の方が気にかかってしまうのであった。トイレも風呂も制限時間があるわけじゃなし、ゆっくりすれば一人でも何とかなるだろう。
貧乏症によってねじ曲げられた希望的観測を胸に、僕は自宅へと戻った。

しかし無理なものは無理なのであった。
まずトイレが一苦労である。
立つ事も座る事も出来ない以上、これは当然だ。
痛み止めの座薬を使う事で痛みは軽減されると予想していたのだが、あまり効かないようだ。歯医者の麻酔や風邪薬は悪夢にうなされる位に良く効いたのに……これではシャワーを浴びる事などもってのほかだろう。
更に寝室が2階である事も問題だ。事ある度に激痛に耐えながら階段の上り下りをするなんて事は、安静の二文字の対局にある行為だろう。
1階の和室に布団を敷く事も考えたが、腰痛持ちにとって床に直敷きした布団から起き上がるのは結構辛い。ベッドからでさえもやっとの思いで起き上がっているのだ。
やっぱり自宅療養は無理っぽい。

「保険てどうなってたっけ?」
カオに頼んで生命保険の契約内容をチェックしてもらうと、入院5日目から一定額を支払うという契約になっていた。
手術費用に対してはどうか。
調べるとヘルニア手術の場合は、日額の10倍が支払われるとある。
入院期間を術前1週間と術後2週間の計3週間と仮定して、そこから4日引くと残りは17日間。

((入院)日額×17)+((手術)日額×10)= ¥............!!

あ、ちょっとお釣りくるやw
念のため保険会社の担当者に電話をかけて自分の解釈が間違っていない事を確認すると、そこには一転して入院する気満々の気弱なヘルニア患者(37)が居るのであった。

ユタハルごめん。
お父さんは自分の身体の事をお金次第で決めますた。

いやホント保険て大事だわ。
ちなみに車の保険と違って生命保険は、使っても次から保険料が高くなったりしないそうです。心配のあまりこんな事まで聞いたりして、貧乏人には心の休まる間などないのであった。

僕はカオに頼んで、病院に電話をかけてもらった。
「やっぱり痛いので今から入院していいすか?」
時間は17時を回っていた。
一週間のつもりの自宅療養が半日で終ってしまった。
今思うと迷惑な患者だったかもしれない。
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