ミスター・ヴァーティゴ
2009/04/07 Tue
ご心配をおかけしましたが、僕の足の怪我は大したことはなかったようです。紫色に変色していた右足の薬指は、今ではほぼ正常な肌色にもどり、痛みも殆どありません。
怪我をした晩、痛みのあまりの激しさに、僕は普段滅多に飲まない頭痛薬を服用しました。鎮痛効果を期待してのことです。
滅多に飲まないと書きましたが、それは、僕はどうもその種の薬が「効き過ぎる」体質であるらしく、飲むと決まって悪夢を見たり、翌日まで続くしつこい倦怠感に悩まされたりするからです。
で、案の定、夜中にシュールな夢にうなされて、飛び起きたりとかしちゃったわけですが、今日はそんな薬にまつわる僕の体験のなかでも、特に強く印象に残っている話をしようと思います。
あ、ひとつおことわりしておきます。以下の話は、多少、いや、モロに下系の話です。食事中の方にとって不快な表現も出てきます。なので、そのての話が苦手な方は、読まれない方がいいかもしれません。
それは数年前、僕が親不知を抜いた日の晩の出来事でした。
【200X年3月5日】
昨晩は、歯科治療の為に打たれた麻酔と、食後に服用した痛み止めのせいで、なんだかもう、すっかりラリラリな状態だった。そのせいか、風邪をひいた時のような不快な倦怠感が身体からずっと抜けなかった。しかし治療が半ば終わった安心感から、多少楽観的な精神傾向にあった僕は「鎮痛剤の副作用などは、これまで悩まされていた歯の痛みよりマシだ」と開き直って、そのまま寝てしまう事にした。
しかしベッドに入ってしばらくすると、上下感覚が曖昧になり、底なしの穴に落ちて行く様な不安感に襲われた。
多分薬のせいだ。痛みが中々引かないのも嫌だが、薬の効き目がありすぎるのも困った物だ。こんな時は構わずに寝てしまうに限る。僕は目を瞑って眠りの尻尾を捕まえる事に専念した。
ほどなくしてふと「放屁」したくなった僕は、隣にカオが寝ているのも構わずに、ケツに軽く力を込めた。遠慮で屁の一つもこけんで何が夫婦か。
ところが・・・
!!
アヌスに感じたこの感触は、「空砲」のそれではなく、もしかして、いや確実に「実弾」が通過した時のモノではないか?
「俺 ウンコ もらし ちゃった か?」
軽く、否、かなり狼狽した僕は、俄かにベッドから跳ね起きた。それは、二児の父として、大人の男として、到底受け入れることなどできない大失態であった。なんとかこの不始末を秘密裏に処理しなければならない。
とりあえず誰にも見られないように密室に移動し、そこで被害状況を確認しようと思い、僕は階下のトイレに向かおうとした。
ところが足を一歩踏み出したそのとたん、天地はひっくり返り、床がグラグラ揺れ始めるではないか。
いかん、薬の効き目がまだ残っている。僕は堪らずベッドの横で尻餅をつきそうになった。
「うわっ、今ケツをつくのはまずいぞ。」
なにしろパンツの中には、望まれずに誕生してしまった隠し子が入ったままなのだから。尻餅などつこうものなら、ひどい事になってしまうだろう。
僕は反射的に腹筋に力を込めて、尻を浮かせようとした。だが薬でラリった身体は、いっこうに言う事を聞いてくれず、そのまま無様に尻餅をついてしまうかと思われた。のだが。
「あれ?」
気がつくと、僕はまだベッドの上にいた。
なんだ夢オチかよ、まったくとんだ悪夢もあったもんだ。
己の失態が夢だったと分かり安心した僕は、再び目を瞑って眠ろうとした。のだが。
「あれ?」
なんかケツの感触、おかしくないか?異物感というか、濡れているというか。
さっきの悪夢、ウンコを漏らしたところだけは現実だったのかもしれないな。やれやれ、やっぱり確認しなければいけないようだ。
僕はしぶしぶベッドから起き上がり、先ほどと同じようにトイレに向かう。すると途端にまた床がグラグラ揺れ始めるではないか。
「なんだよ、まただよ、勘弁してくれ。」
僕は倒れまいとして、手を伸ばして壁に寄りかかろうとした。が、努力虚しく左手は空をつかむばかり。僕はまたまた尻から先に、床に向かって落ちていった。のだが。
「あれ?」
またベッドの中だ。もう何がなんだかわからない。
僕は転んだのか、それともずっと寝ていたのか。ブツは生まれちゃったのか、それとも面目は保たれたのか。いったいどこからどこまでが現実なんだよお。
もう悠長に寝ている事など出来なかった。
僕は慎重に身体を起こすと、今度はゆっくりと慎重に両足を床につき、まずベッドに腰掛ける体勢をとった。そのまま待つことしばし。よし大丈夫、眩暈は襲ってこない。
僕はソロソロと立ち上がり、壁に手をついてゆっくりと階段を下りた。
結構な時間をかけてトイレにたどり着いた僕は、ちょっと躊躇してからガバッとパジャマのズボンを下げた。もちろんパンツごとだ。
パンツの中に、ブツは・・・・・・無い。よかった、俺はまだ大人だ。
しばらくそのまま座ってみたが、便意がやってくる様子はなかった。安心はする気になれないが、眠っても問題は無さそうだ。
僕はよろよろとベッドに戻り、ようやく眠る事ができたのだった。
ごめんなさい、ミスター・オースター。
いつもありがとうございます。
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